もともと免疫システムは、不都合な病原微生物から人間の体を防御する機構として発達してきました。免疫システムには、「獲得免疫」と「自然免疫」の大きく2つのシステムが存在します。獲得免疫は病原微生物に特異的に反応するのに対し、自然免疫は非特異的に、もしくは病原微生物の共通部分をパターン認識して応答します。この2つの機構は、共同で感染防御にあたります。
通常原因不明の発熱が続くとき、(1)感染症、(2)悪性腫瘍、(3)リウマチ性疾患・膠原病、(4)その他(薬剤熱、内分泌疾患など)の可能性を考える必要がありますが、その他に該当する症例の中には、検査を進めていく途中で自然に治ったり、また逆に治ったと思っても再び発熱してしまい、診療に難渋する場合があります。そのようなケースを説明する1つとして、1999年に「自己炎症性疾患」という病気の概念が提唱されました。以前より獲得免疫の異常として各種の「自己免疫疾患」が知られていましたが、「自己炎症性疾患」は主に自然免疫の異常によって炎症反応が自然に起こり臓器障害に至ります。通常、「自己免疫疾患」では自己抗体や自己反応性Tリンパ球などを認め診断に有用です。一方、「自己炎症性疾患」では、自己抗体や自己反応性Tリンパ球は認めることは少なく、診断には臨床症状や遺伝子検査が重要となります。原因不明の持続する発熱または周期性発熱など持続する炎症が存在する場合、1つのカテゴリーとしてこの「自己炎症性疾患」を念頭におく必要があります。
しかし、「自己炎症性疾患」には典型例とともに非典型例が存在するため、診断が難しい患者さんにしばしば遭遇します。また、「自己炎症性疾患」という言葉が定義する疾患の拡がり(どの疾患が「自己炎症性疾患」に該当するかなど)についても一致した見解はなく、2型糖尿病や動脈硬化も広義の自己炎症性疾患とする意見もあります。また、自己炎症性疾患は発症頻度が低く、患者さんの長期予後がどうなるかについて、十分には把握できていません。治療開発も、十分にはなされていません。このような日本の「自己炎症性疾患」の現状を背景に、患者さんとそのご家族及び医療関係者に対して役立つものとなることを目標に、このホームページは作成されました。

自己炎症性疾患の分類
A. 狭義の自己炎症性疾患
家族性地中海熱
クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)
家族性寒冷蕁麻疹
Muckle-Wells症候群
CINCA症候群/NOMID
TNF 受容体関連周期性症候群(TRAPS)
高IgD症候群(メバロン酸キナーゼ欠損症)
ブラウ症候群/若年発症サルコイドーシス
PAPA(化膿性関節炎・壊疽性膿皮症・ざ瘡)症候群
中條-西村症候群
Majeed症候群
NLRP12関連周期熱症候群(NAPS12)
インターロイキン1受容体アンタゴニスト欠損症(DIRA)
インターロイキン36受容体アンタゴニスト欠損症(DITRA)
フォスフォリパーゼCγ2関連抗体欠損・免疫異常症(PLAID)
NLRC4異常症
A20ハプロ不全症(HA20)
乳児発症STING関連血管炎(SAVI)
Aicardi-Goutières症候群(AGS)
ADA2欠損症(DADA2)
COPA症候群
HOIL-1欠損症
HOIP欠損症
OTULIN欠損症/OTULIN関連自己炎症症候群(ORAS)
ROSAH症候群
SLC29A3異常症
TRNT1欠損症
WDR1欠損症
ケルビズム
VEXAS症候群
「自己炎症疾患およびその類縁疾患に対する診療基盤の確立」研究班のなりたち
平成21年度より、厚生労働省難治性疾患克服研究事業において、これまで十分に研究が行われていない疾患について、診断法の確立や実態把握のための研究を行う研究奨励分野が新たに設置されました。その中で、自己炎症性疾患に関する研究課題として、①Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS) に対する細胞分子生物学的手法を用いた診療基盤技術の開発、②日本人特有の病態を呈する高IgD症候群に向けた新規診療基盤の確立、③家族性地中海熱の病態解明と治療指針の確立、④TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS) の病態の解明と診断基準作成に関する研究、⑤NOD2変異を基盤とするブラウ症候群/若年発症サルコイドーシスに対する診療基盤の開発、⑥中條-西村症候群の疾患概念の確立と病態解明に基づく特異的治療法の開発、の6題が採択されました。それぞれの疾患の研究が進展し、本邦における各自己炎症性疾患の実態が明らかにされましたが、一方、自己炎症性疾患全体にわたる診療体制のシステム作りの必要性が認識されてきました。
このような必要性にこたえるべく、個々の自己炎症性疾患を包括的に把握する「自己炎症疾患およびその類縁疾患に対する診療基盤の確立」研究班が平成24年度よりスタートし、その中で本ホームページの前身が立ち上げられました。平成29年にはCAPS,TRAPS,MKD,Blau症候群を対象として本邦で初めて『自己炎症性疾患診療ガイドライン2017』が発刊され、また、同年に日本の先天性免疫異常症診療・研究の中心的な組織として日本免疫不全・自己炎症学会(JSIAD)が発足しました。研究班はJSIADとも連携しながら本邦の自己炎症性疾患診療体制の整備を現在に至るまで主導し、令和8年には先のガイドラインの改訂版として『自己炎症性疾患ガイドライン2026』の発刊が予定されています。この流れを受けて、本ホームページもJSIADに所属する形でリニューアルしています。
本研究班の目指す到達点は、発足時と変わらず自己炎症性疾患患者さんのQOL向上・治癒であり、その実現に向けて歩んで行きたいと考えています。皆様のご協力をお願い申し上げます。

「研究班」
| 氏 名 | 所 属 | |
| 代表 | 西小森 隆太 | 久留米大学医学部小児科学講座 |
| 分担 | 井澤 和司 | 京都大学大学院医学研究科発達小児科学 |
| 石村 匡崇 | 九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野(小児科) | |
| 井田 弘明 | 久留米大学医学部呼吸器・神経・膠原病内科講座 | |
| 伊藤 秀一 | 横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学 | |
| 今井 耕輔 | 防衛医科大学校小児科学 | |
| 植木 将弘 | 北海道大学大学院医学研究院小児科学教室 | |
| 大西 秀典 | 岐阜大学大学院医学研究科生殖・発育医学講座小児科学分野 | |
| 岡田 賢 | 広島大学大学院医系科学研究科小児科学 | |
| 小原 收 | 公益財団法人かずさDNA研究所 ゲノム事業推進部 | |
| 金澤 伸雄 | 兵庫医科大学皮膚科学 | |
| 金兼 弘和 | 東京科学大学小児地域成育医療学講座 | |
| 河合 利尚 | 国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 免疫科 | |
| 川上 純 | 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 先進予防医学共同専攻 リウマチ・膠原病内科学 | |
| 神戸 直智 | 京都大学医学研究科 医学専攻皮膚生命科学講座皮膚科学 | |
| 岸田 大 | 信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科内科 | |
| 桐野 洋平 | 横浜市立大学大学院 医学研究科 血液・免疫・感染症内科学 | |
| 笹原 洋二 | 東北大学医学部小児科 | |
| 杉浦 一充 | 藤田医科大学医学部皮膚科学 | |
| 高田 英俊 | 筑波大学医学医療系小児科学 | |
| 高橋 徳幸 | 名古屋大学大学院医学系研究科地域医療教育学寄附講座 | |
| 武井 修治 | 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野 | |
| 日衛嶋 栄太郎 | 京都大学大学院医学研究科発達小児科学 | |
| 右田 清志 | 聖フランシスコ病院 | |
| 宮前 多佳子 | 東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科 | |
| 向井 知之 | 川崎医科大学免疫学 | |
| 森 雅亮 | 東京科学大学 国際医工共創研究院 生涯免疫医療実装講座 | |
| 盛一 享德 | 国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室 | |
| 森尾 友宏 | 東京科学大学総合研究院 | |
| 八角 高裕 | 京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター | |
| 和田 泰三 | 金沢大学医薬保健研究域医学系 小児科 |
